2人で近くのスーパーに入り、俺はさっとカゴを取った。
「あの・・・。持っていただけるんですか?」
「もちろん、それぐらいしますよ?だって、作ってくれるんだろ?」
「はい。・・・じゃあ、お願いします。頑張って美味しい料理作りますから!」
・・・・・・本当、が言ったみたいに、デートみてェだな・・・。
なんてことを考えていると、自然と口元が緩みそうになって、慌てて俺は力を入れ直した。
・・・ヤバイ。俺、今、すごく幸せかもしんねェ・・・。
新ちゃん!神楽ちゃん!今日は銀さんを1人にしてくれてありがとォォォー!!
とでも叫びたい気分だ。
そうこうしている間に、は迷いもなく、材料を買い物カゴへと入れていた。おそらく、普段からこうして1人で買い物へ来て、親御さんのために・・・あるいは自分だけのためにご飯を作ったりするんだろう。
・・・でも、今日は違うだろ?
「。銀さんには相談してくんねェの?」
「あ!す、すいません!!つい、いつものくせで・・・。今まで入れた材料の中で、苦手な物とかありました?」
「苦手なモンは無かったけど・・・。何を作ってくれるんだ?」
「え〜っと・・・。とりあえず、今は、つけ合わせのような物しか考えてなくて・・・。メインをどうしようか、と・・・。」
「そうか。・・・そうやって、相談してくれよな?」
「はい!」
が嬉しそうに笑う。・・・やっぱ、1人でいることに慣れてんだろうな。
だったら、今日は目一杯、を楽しませてやろう!
そう思って、それからの買い物は、俺からも話しかけるようにして、楽しく品物を選び終えた。
「・・・さて。それじゃ、早速準備しますね!」
「その間、俺はどうしてればいい?」
「何でもいいですよ。ただ、その前に!調理器具を出してもらえると助かります。」
「はい、了解。」
「ありがとうございます。」
何が必要になりそうかなどと話しながら、俺はガチャガチャと器具を並べていった。
その後は、待っていてください、と言われたため、俺はまたソファに寝転がり、読みかけのジャンプに手を伸ばした。
・・・が。
“カチャカチャ・・・カチャカチャ・・・。キュッ・・・。”
・・・・・・・・・。
やっぱり、集中できねェェェ・・・!!
今まさに、俺の部屋で、が料理を作ってんのかと思うと、何だかソワソワする。新八や神楽が作るときは、何にも気にならなかったのに、それがになっただけで・・・・・・。
ちょっと自分を情けなく思っていると、ご飯にはあり得ない、甘い匂いがしてきた。
・・・惚れた女と甘い匂い。その誘惑に勝つ術を俺は知らなかった。
「なァ、。何作ってんだ・・・?」
「あ。バレちゃいました?って、同じ部屋にいるんだから、さすがにわかりますよね。・・・実はデザートも作ってみようと思ってるんです。」
「デザート・・・?」
「はい!たしか、銀さんって、甘い物がお好きなんですよね?ですから、大したものではないですけど・・・。ちょっとした物を。」
「ちょっとした物?」
「はい。プリンを作ろうかな〜と・・・。買い物をする前から、それだけは考えていて。なので・・・。ジャジャーン!家からバニラエッセンスを持って来たのです!」
は、無邪気な笑顔で嬉しそうにそう言った。
・・・可愛すぎですッ!!
「簡単に出来る物なのか?」
「そうですね。意外と簡単ですよ?」
「へー・・・。じゃ、が作ってるとこ、見てていい?」
「ええ、構いませんよ。・・・でも、ちょっと緊張しちゃうかも。」
今度は恥ずかしそうに笑う。・・・・・・本当、なんで、こんなに可愛いかね〜・・・。
そんなことを思いながら、料理するをボーッと見ていると。何だか、ソワソワと言うか・・・ムラムラと言うか・・・落ち着かない気持ちになってきた。
・・・だって、料理中って結構隙だらけなんだよな。そりゃ、調理してんだから、そっちに集中しちまうモンだけど。それだけじゃなく、両手とかも塞がってるわけだし・・・・・・。
・・・って、何考えてんだ、俺?!!
から離れていても、の近くにいても、結局同じだった。
飯の用意ができるまで、俺はゆったりと待てなかった。・・・余裕なさすぎ。
「――これで・・・完成っと・・・。よし・・・、出来たー!・・・どうですか?」
「お、おう・・・。美味そうだな!」
「ありがとうございます!・・・それじゃ、早速ご飯にしましょうか。」
「ああ。」
美味い。本当に美味い。・・・それは口に出せた。けど、もっと別の感想が俺にはあった。
『はいいお嫁さんになるな。』
いや、むしろ。
『これから毎日、俺のために作ってくれませんか?』
とか。・・・って、それは早すぎだよな、と考えて、そこまでは言わなかった。でも、本当はご飯が美味くなくたって、それは言いたい言葉であって・・・・・・って、話がずれてるな・・・。
とにかく、俺たちはが作ってくれた美味いご飯を食べ終え、食後にはデザートのプリンも食べた。
・・・本当、マジで美味かった。が作ってくれた甘い物、これ以上ない組合せだ。
そして、腹が膨れると大抵・・・眠気がやってくる。2人で後片付けをしていると、が小さく欠伸をしたのが見えた。
「片付けが終わったら寝るか?」
「あ・・・。すみません、ちょっと疲れちゃったみたいで・・・。」
「買い物にも行ったしな。」
「それと、はしゃぎ過ぎたのかもしれません。」
少し恥ずかしそうに笑いながらも、どこか眠たげなに見惚れちまいそうになるが・・・。
そうだよな。寝る、んだよな・・・。
とりあえず、俺はいつも自分が寝ている部屋を指して言った。
「。寝るときはこの部屋でもいいか?」
「はい、どこでも。・・・銀さんは、どちらで?」
「俺は・・・まぁ、ここのソファでいいや。」
「えっ?!ダメですよ!!風邪ひいちゃいますッ!!」
「でも、俺は神楽みたいに押入れでは寝れねェし。」
「押入れ・・・ですか。それは・・・無理、ですね・・・。じゃあ、私がソファで構いませんよ。」
「それはダメだ。が風邪ひいちまうだろ。」
「それは銀さんだって同じことです。」
「同じじゃねェって。鍛え方が違うんですー。」
「違わないですッ!誰だって風邪になるときはなるんです。」
「俺はならないの。」
「そんなことッ・・・・・・と言うか、こっちの部屋って2人分の布団敷けません?」
「え・・・。ま、まぁ・・・敷けるけど。」
別に言い争うつもりはなかった。・・・けど、こんな展開になるとも思ってなくて。
「じゃあ、2人ともこの部屋でいいじゃないですか。」
「・・・・・・。」
「ダメですか?」
「・・・がいいなら、俺はいいけど。」
「私もいいですよ?だから、そうしましょう。」
笑顔では言ったけど・・・一応、男と女ですよ?いや、一応どころか、完全にこっちは女と意識しちまってるわけですよ。そんな中、同じ部屋で寝るなんて・・・。
でも、ここは俺がしっかりすればいい話だよな・・・?うん、頑張れ、銀さん!
そう決意しながら、2人分の布団を敷いていく。敷き終えた頃、またが小さく欠伸をしてから、言った。
「ちょっと早いですけど、そろそろ寝ます?」
「・・・そうだな。」
「それでは、おやすみなさい、銀さん。」
「ああ、おやすみ・・・。」
なんて普通に返すが、内心バックバクだ。そこまで近くではないとは言え、隣にはが寝転んでいる。ときどき、布団の擦れる音とか聞こえてきて・・・。もうヤバイ。いや、でも、頑張るんだろッ、俺?!
そんな自分との格闘をしながら、しばらく経つと・・・・・・。
「・・・銀さん。もう寝ちゃいました?」
「いや。起きてる。」
「そうですか・・・。あの、今日はありがとうございました。すごく楽しかったです。」
2人とも互いを見合わせることなく、俺は天井を、は俺とは反対側の方を向いて言葉を交わした。
・・・俺としては、の方なんて見れねェからな。見たら・・・たぶん、それこそマズイ。はで、こっちを見るのが恥ずかしいんだろう。
と思ったけど・・・・・・なんで??そういや、今日も何度か照れた様子があったし・・・そもそも、男の家に泊まるなんて、普通言い出すか?
などと考え出すと、なんか、だんだん期待が出てきた。
「最初、私が女だから泊まるのを止めておいた方がいい、って言ってもらえて・・・。少し嬉しかったです。女扱いしてもらえるんだ、って・・・。」
「当たり前だろ。」
「いえ・・・。私には嬉しかったんです。」
ほら。コレって、そういうことなんじゃねェの??
俺は真実を確かめようと、くるっとの方を向いた。
「じゃあさ。俺が今、本当はを自分のモノにしたくなってっけど、それを理性でグッと堪えてるとしたら?」
「それは・・・・・・。」
はまだ向こうを見ている。俺は静かに、の言葉を待った。
「それは・・・・・・嬉しいですけど、困ります。・・・心の準備ができてなかったので・・・・・・。」
それを聞いて、俺は思わず笑みが浮かぶ。
「大丈夫。そんなことしねェよ。・・・俺、惚れた女は大事にする方だから。」
「・・・・・・ありがとうございます、銀さん。」
また恥ずかしそうな声だったけど、言い終えてから、はこっちに向き直した。
部屋が暗いから見にくいが・・・たぶん、やっぱり照れた顔だったと思う。でも、は笑顔で、次の言葉を放った。
「では、あらためて、おやすみなさい。・・・銀さん、大好きです。」
それだけを言うと、はまた向こうに寝返りを打った。
・・・・・・その可愛さは、反則です・・・。あんなこと言った手前、手を出すわけにはいかねェし・・・。でも、正直、もういろいろと限界。
あ〜あ。やっぱ、素直に手出しとけばよかったか?と思いながら、結局俺は寝れずにいた。
次こそは。次の機会こそは、ぜってェー襲ってやる。覚悟しとけよッ!
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後編までお付き合いいただき、ありがとうございました!これを機に、『銀魂』メンバーもちょこちょこ増やしていくつもりなので、今後も宜しくお願いします(笑)。
今は、こんな感じですけど・・・・・・少しずつ、書き慣れていければと思いますっ!
今回は、「余裕そうに見せておいて、実は焦りまくっている銀さん」が書きたかったのでした(笑)。銀さんは1人でテンパっていればいいと思います(←)。
と言いつつ、いずれは余裕気な銀さんにもチャレンジしたいですね。むしろ、いろんなキャラに挑戦したいと思っております!例えば・・・そう、高杉さんとか!(←無茶)
('09/12/18)